3日間でゴールデンカムイスタンプラリーを駆け抜けてみる~3日目
~3日目~
さて、いよいよ最終日となる3日目である。
本日は旭川市博物館からスタートし、網走監獄、釧路市立博物館を経て、阿寒湖温泉にあるアイヌコタンのアイヌシアターイコロまで、道北・道東をぐるっと巡ることになる。
予定ルートは次のとおり。
延べ431kmということで、今回の旅で最長距離を走ることになる。
アイヌシアターイコロは夜間も営業しているためゴール地点に設定。問題は最終入場が16時半の釧路市立博物館である。ここまででも旭川からの距離は350kmを超える。チェックインスポットの見学や食事に時間をとりすぎると樺戸博物館の二の舞になるだろう。もちろん寝坊は許されない。
幸か不幸か緊張のせいで眠りが浅かった僕は、今回だけは寝過ごすことなく、開館間もない朝9時に第8チェックインスポット旭川市博物館に到着した。やればできるじゃないか。
ARは鶴見中尉。
旭川博物館は小樽市総合博物館や北海道博物館同様、旭川の歴史と自然、アイヌ文化に関わる展示で構成されており、特色としては、旭川の「軍都」としての性格を垣間見れることか。
鶴見中尉たちも闊歩したであろう、師団通りの街並み。
おなじみマキリ。
多彩なトゥキパスイ(捧酒箸)。
原作ではアシリパのフチが穀物を刈り取るシーンに登場した貝包丁。内陸の上川でも使われていたらしい。
昭和レトロな横丁には旭川ラーメンの人気店蜂屋もあるが、さすがに朝は営業していないので別の店へ。
旭川のご当地グルメ、ゲソ丼発祥の店といわれる立ち食いそば屋天勇にて、月見そばとゲソ丼のセット。
飾り気のない質実剛健な朝食に「軍都」の面影を見るようだ、というのは言いすぎか。
10時頃に旭川を発ち、東のかた網走へ向かう。最終日で気合いが入っているのか、かなりいいペースだ。
第9チェックインスポット網走監獄に到着したのは13時頃のこと。
ARはやはりこの人、脱獄王・白石だ。
庁舎にはAR取得ポスターやお土産屋のほかにもこんなものもあった。
ッピュウ☆
野田サトル先生のサイン色紙とは、やっぱり網走監獄は優遇されてるんだな…!
網走監獄では膨大な量のマネキンで監獄として機能していた当時の様子を再現しており、今回のチェックインスポットのなかでは一、二を争う充実っぷり。
水門。
道路開削に駆り出された囚徒たちの休泊所。
いまにも脱獄しそうな連行場面。
食堂。
トイレ。
風呂場。
炊事場。
独房。
白石、ジャマ!!!
並んでると、どっちがどっちだか…。
五翼放射状平屋舎房。
全体像はとてもじゃないがiPhoneでは撮れなかった。
そして内部。
こうして凶悪犯たちが収監されていたわけだ。
白石も脱獄中。
網走監獄に来るのは今回で3度目だが、ARでの写真撮影をとおして、いままでとは違った楽しみ方ができた。インスタ蝿などと呼ばれて批判されがちだが、SNS映え写真を撮ることを目的とした旅というのも、目的意識を持って景色を見つめることになるので、漫然と見ていては気づかなかった土地の魅力の再発見に繋がるような気がする。
昼食は監獄食堂で臭い飯。
プラスチック皿の見た目も味も給食みたいだが、栄養バランスに配慮されているし、サンマは旬なので普通に美味い。あれ、もしかして僕より健康的な食生活では…?
昼食を済ませ、14時半頃に網走を後にして、釧路へ南下。
しかし2時間強で釧路までというのはさすがに無理があり、第10チェックインスポット釧路市立博物館到着は閉館後の17時であった。
ARは谷垣ニシパ。
入口付近の掲示板にARポスターが貼ってあったので閉館後でも取得できた。もしかしたらすべての施設でこういった救済措置が取られているのかもしれない。
しかし樺戸の轍を踏んでしまったのは悔しい。網走で長居しすぎたかな…。
せっかく釧路まで来たので、中途半端な時間ではあるが、気を取りなおして釧路グルメを食べに行く。釧路といえば魚介。店はこの港町を代表するグルメ回転寿司まつりやだ。
谷垣ニシパの好きな勃起……じゃない、ホッキ。瑞々しくてコリコリ歯応えがある。こいつぁヒンナだぜ。
道東産のサンマをチタタプしてオソマをのせた軍艦。これもとぉってもヒンナ。
個人的にまつりやは函館の函太郎と並んで、北海道のグルメ回転寿司の双璧だと思う。東京に進出したトリトンや花まるばかり注目されがちだが、博多ラーメン同様、本当に美味いものは現地にあるものだ。
寿司を軽くつまんでから、ゴールの阿寒湖アイヌコタンを目指し、北上する。
阿寒湖温泉街のアイヌコタンに到着したのは日も暮れた19時のこと。第11チェックインスポットのアイヌシアターイコロである。
最後のARはお食事アシリパさん。
やった、ついにコンプリートだ!
見学できなかった施設もあるけど、なんとか完走できた…!
イコロはアイヌ古式舞踊やイオマンテの火祭りを見ることができる劇場だ。20時開演の部まで時間があるため、観光に特化した現代のアイヌ集落であるアイヌコタンを散策する。
飲食店や土産屋が軒を連ねる夜のアイヌコタン。
実はここに、今回の旅で一番行きたかった店がある。
アイヌ料理が食べられる民芸喫茶ポロンノだ。
店内は木彫りなどアイヌ風の調度が並ぶカフェといった雰囲気。ゴールデンカムイ読者ならば一度はアイヌ料理を食べてみたいと思うだろうが、ポロンノへ行けばそれが叶うのである。
ユク(鹿)のオハウの定食を注文。チタタプはなかったが、やはりオハウはアイヌ料理の基本なのだろう。定食のメインを張っている。
セットのドリンクはシケレベ茶。身体に良さそう。
サイドメニューとしてポッチェイモも注文する。
こちらがユクセット。
オハウは鹿肉のほかにギョウジャニンニク、人参、ワラビ、キノコなど、山の幸がどっさり。シンプルな塩味のスープに鹿と野菜の旨味が溶け込み、滋味深い味わい。バターにも似た鹿肉や、独特なギョウジャニンニクの香りは苦手な人もいるかもしれないが、自然を直に味わっているような野趣を感じる。しかし複雑で濃厚な出汁文化にどっぷり浸かった濃い味好みな僕の舌には、出汁が薄いせいもあるのか、味に奥行きがないというか、どこか物足りなさも感じた。率直な感想が「これ、味噌を入れたらもっと美味くなるんじゃない?」ということ。
野田サトル先生も実際に食べて同じことを感じ、ああいうキャラ造形になったのかはわからないが、味噌の濃厚で複雑、刺激的な味を知った若いアシリパさんがオソマ狂いになるのも納得した。いまなら彼女の気持ちが舌で理解できる。
定食のご飯はアマムという素朴な豆入り炊き込みご飯。これに鮭の血合いの塩辛であるメフンをのせて食べる。以前食べたメフンは生臭くて苦手だったが、この店のものは塩辛さが突き抜けていて臭みを感じず、アマムが進む。ヒンナヒンナ。
シケレベ茶。シケレベがどんな木の実なのかまったくわからないが、ほのかに柑橘系の香りがして飲みやすい。胃もたれに良いということなので、今回の旅でだいぶ酷使した胃を休ませてあげよう。
ポッチェイモ。作り方はメニュー写真参照。表面がカリカリで香ばしく、じゃがいもを発酵させているせいか、わずかに酸味も感じるいも団子(いももち)という印象。素朴だが、バターをのせて食べるとなかなかヒンナ。
このほかにもアマムのカレーやポッチェイモのピザなど、伝統的なアイヌ料理だけでなく、現代的にアップデートしたメニューもあるようで面白い。全メニューを食べてみたいし、また来よう。
さて、20時からはイコロでアイヌの古式舞踊を見学する(イコロでは上演中の写真や動画の撮影を禁じられているので画像はなし)。
十数種類ある演目のなかからランダムでいくつか上演するらしく、僕が今回見たのは踊り手の女性たちがシントコを囲んで歌う座り歌、お爺さんがトゥキパスイを指揮棒のように振って酒を神に捧げるカムイノミと剣舞、ムックリ(口琴)とトンコリ(竪琴)の演奏、ゴールデンカムイでも登場した鶴の舞、女性二人がお盆を奪い合う踊りへクリサラリ(どんな踊りだ)など。
個人的に一番印象に残ったのが、6人の女性が長い黒髪を振り乱しながらヘドバンする黒髪の踊りフッタレチュイである。長い髪が上下し乱れる様子には、僕らの心を高ぶらせる効果があるようで、ヘドバンが激しくなるほどに見ているこちらも昂揚していく。メタラーがロン毛なのも理に適っているのだろう。まさかアイヌコタンでメタルの神髄に触れることになるとは。ヘヴィメタル・イン・ザ・コタンである。
演目が進むにつれフロアも温まっていき、最終的にエッサーホーホーという大勢が輪になって回る踊りではオーディエンスも巻き込んで盛り上がった。
続いて21時からはイオマンテの火祭りである。梟のカムイを送るという設定が加わっているが、演目は先ほどの古式舞踊とほぼ一緒。ただし、ステージで火を熾し、BGMも流れるせいか、あるいは古式舞踊でフロアが温まっていたせいか、常に拍手喝采、かなりの盛況である。ラストのエッサーホーホーの輪もステージからフロアにかけて広がり、盛り上がりは最高潮だ。
正直にいえば、僕のアイヌ文化への関心は飲食や衣装に集中しており、歌や踊りにはあまり興味がなかったのだが、実際に生で見ると想像以上に楽しかった。帰りの車中でOki dub Ainu Bandを流すくらいハマってしまった。
Oki dub Ainu Band - Live @ Trans Musicales 2017
アイヌコタンはいままでお土産屋しかのぞいたことがなかったのだが、アイヌ料理もアイヌ舞踊も充実していて、この旅のゴールに相応しい感動と発見があった。本当に良い場所だ。また来たい。
こうして3日間に及ぶスタンプラリーの旅は慌ただしくも終わりを迎えた。
走行距離は1285.2km!お疲れ様でした!
見学できなかったスポットもあるが、ARはコンプリート。スケジュール管理さえできれば、3日間でスタンプラリーを完走するのは充分可能である。
今回の旅をとおして僕なりに北海道の魅力を再発見できたが(このブログを読んでいる人に伝えられるかどうかはわからないけど)、率直な感想は「北海道をたった3日で回ろうとするな」ということである。あたりまえだが。
距離の問題以上に、広大な大地に魅力的な場所やグルメが数多くあるのだ。駆け足で回るのはもったいない。じっくり腰を据えて、寝過ごしても笑って済ませられるくらい余裕のある旅を心がけたい。
~番外編~
ちなみに網走監獄ではこんなお土産を買った。
ずるいなあ、こんなの絶対買うだろ…!
ピリ辛山椒味噌で、ご飯に合うし酒肴にもなる。