花の張巡~雲のかなたに~
唐代の忠臣をあげるとき、張巡の名は外せません。彼は安史の乱に際し、安史軍が河北・河南を席巻するなか、睢陽に拠って孤立無援の籠城戦をくりひろげた名将として知られています。
また、睢陽の攻防戦は、城内の女性を飢餓に苦しむ兵士の食糧に供したことで、中国史上における極限状況下のカニバリズムの事例としても有名でしょう。
そんな張巡の最期について、韓愈は次のように描いています。
『張中丞伝後叙』3の3
及城陥、賊縛巡等數十人坐、且將戮。巡起旋。其衆見巡起、或起或泣。巡曰「汝勿怖死、命也。」衆泣不能仰視。巡就戮時、顔色不亂、陽陽如平常。
「旋」はここでは放尿することを指します。つまり、張巡は安史軍に捕われ、まさに殺されようとするときに、立ちあがって小便をしてのけたのです。部下たちは張巡が立ったのを見て、ある者は立ち、ある者は泣きました。それを見た張巡は「汝ら、死を怖れることはない。これも運命である」と諭し、殺されるまで顔色も乱さず平素のようにふるまっていたという、名将の死に臨んでの豪胆さを示すエピソードです。
死を前にしても委縮することなく放尿できる豪胆さ。
これはもう時代や国が違えども受け継がれていく、花の慶次的な”漢”の美学ですね。
花の慶次を見ると、「巡、起ちて旋す」の「起」も違うものが立っていたんじゃないかと勘ぐりたくなります。
そうりゃあ~!!